2017.03.25

世紀を越えた建築物からの情報発信―スピニング・ミル

明治後期から町を見守り、地域住民たちの原風景の一つだった、並松町の紡績工場跡地のレトロなビル。2013年に『スピニング・ミル』と名づけられたこの建物は、大和川のすぐ南、かつて多くの鍜冶職人たちが集まりにぎわいをみせていた「七まち」と呼ばれたエリア-現在の「堺七まち」にあります。


レトロなたたずまいのスピニング・ミル


この貴重な建物を明治時代のおもむきそのままに、イベントホール兼アトリエとして新たな命を吹き込んだ人がいます。それがフォトグラファーの小野晃蔵さんです。
実は堺には縁もゆかりもなかった小野さんでしたが、自分のスタジオとして古い味わいが残る建物を探していたとき、偶然ネットでこの建物がヒット。一緒に下見に行った奥様の「可愛い!」の一言で購入を決めました。


フォトグラファー 小野晃蔵さん


■ 地域住民の思いのこもった建物


元々は自分の作品展や作品作りのために建物を探していた小野さんは、ここを手に入れるにあたり “この建物を自分だけのものにしてはいけない” と強く感じました。そして引越しの挨拶回りの時に予想外の出来事に出会います。なんとご近所の人たちが口をそろえて「あの建物がどうなるか気になってたんや」「来てくれてありがとう」と言葉をかけてくれたそうで、その時 “やっぱり自分だけのものにしてはダメだ” と確信したのです。
現在、建物の1階は小野さんのアトリエ、2階はイベントホールとして開放しています。
以前は洋風の大部屋として使われていたと思われる2階部分。その天井からみつかった漆喰(しっくい)の美しい飾りをいかし、建築時の姿をかぎりなく再現したすばらしいホールとなっています。




2階イベントホール(上) ホール天井の美しい漆喰(下)


 

■ 町に人を呼び込み、つながりをつくる


ホールでは、堺内外で人気のあるフリーマーケット『スピニングマーケット』や海外のアーティストを招いてのコンサート、コンテンポラリーダンスなど、今までの堺には無かった“おもしろい”が集まるイベントを開催しています。
近所のお店と協力して『スピニングマーケット』を共同開催したり、スピニング・ミルのある通りを使ってアート作品を展示したりと、どんどんと“おもしろい”が周りを巻き込んでいっています。エッジの効いたアートイベントに、近所のおばちゃんがふらりと立ち寄ることも。



スピニング・ミルが建っているのは、古代から大坂と和歌山を結ぶ主要街道だった「紀州街道」。いま、その街道にこの建物ができたことで、大阪と堺に新たな文化交流の道筋がついたようです。
「スピニング・ミル」とは英語で紡績工場という意味。その名の通り人と人とを紡ぐ一本の糸となって、町に人を呼び、新たなつながりを創りだす情報発信基地となっています。


<行き方>


●スピニング・ミル



〒590-0912 堺市堺区並松町45・・・阪堺線高須神社駅から徒歩4分、南海本線七道駅より徒歩7分
TEL&FAX:072-242-6894
http://www.spinningmill.info/