2017.03.17

白砂青松のステンドグラス―諏訪ノ森駅舎

海の気配がどこかに漂う、諏訪ノ森にはそんな印象があります。
下車した南海本線 諏訪ノ森駅は、今では珍しい下りホームと上りホームが分離した駅で、下りホームから改札を出て線路沿いに上りホームの駅舎を目指すと、まだ高架化されていない空は広く、時の流れも緩やかに感じられます。

■ 和洋折衷の可愛い駅舎


諏訪ノ森駅の駅舎は小さな駅舎ですが、凝った作りの名建築として知られています。東西に長い半切妻屋根の南北に切妻屋根が追加され、外観は洋風ですが工法としては和小屋で、基礎は石と煉瓦積みという大正時代らしい特徴を備えているそうです。


凝った作りの諏訪ノ森駅舎


駅舎は、中に入るといっそう魅力的。
白い壁にシンプルだけど瀟洒なシェードの照明器具、ほんの2人ほども腰かけると満席になる木のベンチ、そんな待合に光を取り込む五つの窓のステンドグラス。このステンドグラスに描かれているのは白砂青松の風景。それは、万葉の頃から名高い浜寺の松林で、この地から遠く淡路島を望む情景なのです。


瀟洒なカフェのような内装


和風モチーフの美しいステンドグラス


■ じつは南海電鉄の自社設計


一つお隣の旧浜寺駅舎もよく知られた名建築ですが、こちらは明治期に当時の建築界の泰斗・辰野金吾率いる辰野片岡建築事務所の設計。南海電鉄難波駅の駅ビルや、東京駅舎なども彼らの設計です。
それに対して諏訪ノ森駅舎は設計者ははっきりせず、どうやら南海鉄道の自社設計によるもののようです。南海電鉄には、諏訪ノ森を含めて大正期の駅舎が4つ現存しています。
蛸地蔵駅、高師浜駅、西天下茶屋駅がそれです。このうち、蛸地蔵駅と高師浜駅には地元にちなんだステンドグラスも残されています。また、駅舎は建て替えられてしまいましたが、岸里玉出駅には、岸里駅に使われていたステンドグラスが移設されました。
諏訪ノ森駅舎は外装のお色直しをして、壁面には化粧石が貼られていますが、隙間から覗くと鉄平石(てっぺいせき)と呼ばれる当初の化粧石を見ることができます。当時は石を真っ直ぐに切るのが難しく、鉄平石の見分け方は角が丸まったりしていることだそうです。このような駅舎は今後建てられることはないでしょう。
南海本線のこの区間も、いよいよ高架化に伴い改築されることになりましたが、新駅舎ができても旧浜寺駅舎も諏訪ノ森駅舎も文化財として保全されることとなりました。
機会があれば、ぜひ諏訪ノ森の駅舎を訪れて100年間まちの人々が乗り降りした「時」の香りを感じてみてはいかがでしょうか。
*同時期に作られた駅舎たちも合わせて訪ねることをお薦めします。

<行き方>


●南海電気鉄道 南海本線 諏訪ノ森駅



〒592-8347 堺市西区浜寺諏訪ノ森町西2丁78番地
TEL:0725-32-0209(泉大津駅)