2017.03.16

明治の赤レンガづくりの工場が今に残る―イオンモール堺鉄砲町 赤レンガ館

南海本線「七道」駅近く、線路脇に赤レンガの建物があります。現在はイオンモール堺鉄砲町店の敷地内にあるこの建物は、時代を経たアンティークの雰囲気がありますが、どこか無骨な印象もあります。それもそのはず、元々は株式会社ダイセル(大日本セルロイド株式會社)の持ち物で、かつては敷地いっぱいに赤レンガの工場群がありました。

 

■ 日本の樹脂産業のパイオニアが建てた工場


赤レンガの工場が建築されたのは1910年(明治43年)で、当時は「堺セルロイド株式會社」という社名でした。
セルロイドというのは、象牙の代わりとして使われた化学素材で、世界初のプラスチックです。加工がしやすく、メガネのフレームや万年筆の軸、玩具、食器の取っ手の他、写真のフィルムなどにも使われました。「堺セルロイド」はセルロイドの国産化に挑戦して成功した会社です。
工場を設計したのは、当時の工場建築で高名な茂庄五郎が率いる「茂建築事務所」。大きな工場機械を置き、パイプでつないでいくような近代的な工場のためには、どうしても広い空間の建物が必要でした。そのため日本の建築様式では技術的に難しく、西洋の建築様式で建物を建てる必要があったのです。
使用されているレンガをよく見ると、レンガの長い面(長手)の段と小さい面(小口)の段が交互に積み重ねられるオランダ積み(イギリス積み)と言われる積まれ方をしています。この積み方は、見た目はあまりよくないのですが丈夫に安くできるという特徴があって、まさに工場向きの建築方法が採用されていたことがわかります。



 

■ 現在は一部がレストランとしてリニューアル!


堺セルロイドはその後、いくつかの化学工場と合併して1919年(大正8年)に大日本セルロイド株式會=現在のダイセル株式会社となります。地元の方なら1982年(昭和57年)8月にあった爆発事故で「ダイセル」を記憶されていることでしょう。セルロイドだけでなく、ダイセルのフィルム部門からは現在の富士フイルムホールディングス株式会社が誕生するなど、日本の近代化に大きな役割を果たしました。

しかし残念ながら、2008年の大和川の整備事業に伴い、赤レンガの工場群は整理されることに。その際に、地元の住民や建築家から強い要望があって一棟だけが残されることとなりました。

現在は、跡地にできたショッピングモール内のイタリアンレストランとして利用され、「堺鉄炮町赤レンガ館」の名前で多くのみなさんに親しまれるようになっています。



<行き方>
●イオンモール堺鉄砲町 赤レンガ館・・・南海本線七道駅すぐ
〒590-0905 堺市堺区鉄砲町1
営業時間:10:00~22:00
http://sakaiteppocho-aeonmall.com/