2017.03.14

まだまだ知らない、「刑務所作業製品展示場」の世界

JR阪和線・堺市駅より西へ向かい、方違神社をめざして歩いていくと、「刑務所作業製品展示場」という、漢字だらけの看板が。「以前から気になっている」という投稿をいただいたので、訪れてみました。

刑務所作業製品とは、刑務所で懲役(ちょうえき)刑の受刑者がつくっている製品のこと。木工製品のイメージが強い刑務所作業製品ですが、今や人気ブランドとなった 函館少年刑務所製“ブランド”「マル獄シリーズ」の布製雑貨、ガンコな汚れを落としてくれるスティック状の石けんなど、キャピックの愛称で販売されている刑務所作業用品は幅が広くて質がよく、コストパフォーマンスが高いとあってファンも多いといいます。





■お数珠から伝統工芸品まで


全国77ヵ所の刑務所の受刑者たちが、所内の工場で職員や各地域の専門家の指導を受け、特色ある製品づくりをおこなっています。
大阪刑務所(堺市堺区田出井町)では、堺の伝統手織り敷物「堺緞通(さかいだんつう)」がつくられているのだとか。堺の手織り緞通は、江戸時代の天保2年にはじまり、日本三大緞通に数えられるほど。しかし現在、技術伝承のための保存協会のメンバーほか、大阪刑務所内で織られているだけとなってしまいました。



「緞通の最後の名人といわれる方が亡くなり、技術の継承が問題になったとき、大阪刑務所の職業訓練として、手織りの緞通を取り入れることになったと聞いています」受刑者に緞通の技術を教える技官の方が語ってくれました。

 

■塀の中で受け継がれる堺緞通


「手織りは、忍耐力が養われ、集中力が高まります。しかも、できあがったときの喜びはひとしおです。さらに緞通は人それぞれの個性が出て作品になります。自分自身の作品をつくるうれしさや、何かを成し遂げる達成感といった経験を持つことができます」
技術の伝承だけでなく、緞通というものづくりを通して、人として更生する支援になっているように感じます。
受刑者が織りあげた作品は、販売所や堺伝統産業会館などで展示・販売されています。また、堺市役所の高層館21階にある展望ロビーには、仁徳天皇陵を上空から撮影した写真をもとに、受刑者が2年2ヵ月の歳月をかけて織りあげた緞通も展示されています。塀の中で伝承されていく堺緞通。細かくて美しい、味わいのある手織緞通。この技が途絶えることなく、受け継がれていってほしいものです。




<行き方>


●刑務所作業製品展示場・・・JR阪和線「堺市駅」下車徒歩3分



〒590-0014 堺市堺区田出井町6-12
TEL:072-228-4193
営業時間:10:00~17:00
土・日・祝定休